ペパレス > コラムTOP > スキャナーの特性と色の表現
どれだけ高級なスキャナーを用いたとしても、原本と全く同じ色味の画像を作成することは不可能と言っても過言ではありません。
後から何度も補正加えれば可能かもしれませんが、スキャンをしただけの段階では機械の特性上色味が変わってしまいます。
色によっても変化やその度合いが様々なので、それらを把握したうえで明るさやガンマの補正をすることが場合によっては必要となります。
この記事では、
①基本色とスキャン結果
②淡い色とスキャン結果
③濃い色とスキャン結果
の3つのパターンで検証を行い、それぞれ元となる画像データと、それを印刷してスキャンしたものを比較しました。
そこから見えるスキャナーの特性、色味の変化への対策について解説します。
①基本色とスキャン結果
次の画像は、赤、黄、緑、青、黒の5色を基準に、色とスキャン結果を比較したものです。
※使用スキャナー:Fujitsu fi-6800

上がIllustratorで作成した色のサンプル、下がそれを印刷した用紙をスキャンしたものです。
比較結果を見ると、「Red」「Yellow」「Green」「Blue」は本来の色よりも暗さが増して、色味が変わっています。
一方で「Black」はスキャン画像の方が薄くなっています。
抽出した色をカラーピッカーで表示すると、よりそれぞれの色味の変化が分かります。



中でも、緑が実際の色味と大きく異なることがお分かりいただけると思います。
少し青みがかり、黒に近づいたような印象です。
他のメーカーのスキャナーでも同様の結果となりました。
また、黒は他の色に比べ、スキャナーが発する光の強さに比例して色が薄くなりやすい特性があります。
つまり、明るさの補正の影響を受けやすいということです。
補正を全く加えなければ裏写りなどの問題が生じますので、黒が薄くなるのは致し方ないということになります。
緑をスキャナーの設定で補正する
先ほどのスキャン結果から分かるように、緑を基調とした画像はスキャンすると原本とは異なる色合いになりがちです。
実際に植物や細胞など濃い緑を使用した画像をスキャンすると、他の色よりも黒く潰れやすくなっています。
ペパレスでもそのような書籍のスキャンは、スキャナーのガンマ値を高めに設定するなどの対策をとっています。
ガンマ値を上げることで緑特有の暗さの補正はある程度可能です。
しかし、他の色も同じだけ薄くなったり明るくなったりするので、バランスも考えたうえで設定を行う必要があります。
下の画像ではガンマ値を上げたことで潰れていた木々の間の表現が見えるようになりましたが、空などの明るい部分は実際の色よりも淡い表現になっています。

また、緑が黒に囲まれている場合は、特にガンマ値を上げる必要があります。
普通にスキャンしただけでは画像のように周りの黒と同化して形が曖昧になったり、消えてしまったりするケースがあります。

※上が元画像。下が元画像を印刷したものをスキャンした画像。
緑をPhotoshopで補正する
スキャン後の画像であれば、Photoshopで色味を補正することができます。
植物の画像で検証した結果、ガンマ値が高く全体が薄い画像に対して自動カラー補正を行うと、本来の色味に近いハッキリした緑が表現できました。
一方で、適切なガンマ値のスキャン画像で同様の補正を行うと、全体的にとても暗くなりました。
Photoshopで加工を行う前提でスキャンする場合は、ガンマ値を高めにするなど予め加工に応じたスキャナーの設定を行った方が良いでしょう。


次のサンプル画像は、①の基準の色に透明度85%の白を重ねて、色を薄くしたものです。

この画像を印刷し、スキャンしたものが次の画像です。

一番上の段が背景除去機能を切ったままスキャンしたもの、その下の段が背景除去機能のレベルを「低」に設定してスキャンしたもの、その下の段が背景除去機能レベル「中」、一番下の段が背景除去機能レベル「高」でのスキャン結果となっており、下へ下がるほど補正が強くなっています。
次に、淡い色のサンプル画像と背景除去機能オフのスキャン画像(一番上の段)の色をそれぞれ抽出し、カラーピッカーで比較しました。



淡い色は、①の標準的濃度の色よりも全体的に本来の色味に近い状態で画像化されました。
ただし黄色は背景除去機能の影響を受けやすく、弱い補正でも消えてしまいやすい特性があります。
テキスト中心の文庫本などをスキャンする際には都合が良いのですが、イラストや写真は黄色が消えていないか注意する必要があります。
背景除去機能や明るさを可能な限り控えめにすれば、薄い黄色であっても綺麗にスキャンされることもあります。
逆に淡い赤や青は補正の影響を受けにくく、色味もほぼ変わることなくスキャンできることが比較結果から分かります。
次の画像は、①の基準の色を暗くしたものとスキャン画像です。
上がIllustratorで作成したサンプル、下がスキャン結果です。

こちらもカラーピッカーでそれぞれの色を抽出し、比較しました。



全体的に実際の色より暗くなっていますが、やはり緑は他の色よりも変化が大きく、色味を保つのが難しい色であることが分かります。
黒が薄くなっていることから、ガンマ値の影響で画像が暗くなっていないことがお分かりいただけるかと思います。
スキャン作業では画像の暗さに合わせてガンマ値を上げて補正しますが、暗くなるほどに値の上げ幅も大きくする必要があるということになります。
暗い色ばかりが使われた写真やイラストをスキャンする際は、大幅にガンマ値を上げることで漸く本来の色彩に近づきます。
この度の検証から
・緑は現物より暗い色で画像化され、色味の変化も大きい
・黒は画像化すると現物より薄くなる
・淡い色は現物に近い色で画像化されるが、色が濃くなるとスキャン画像の方が暗くなりやすい
というスキャナーの特性が見えました。
このように「色」という視点から見たスキャン画像には、様々な問題があります。
問題を完全に解決することはできなくとも、それぞれに前処理の工夫や修正を重ねることで、用途に適した画像へ近付けることは可能です。
本の自炊を行われる際、その他写真やイラストをスキャンされる際には参考にしてみてください。
スキャナーの特性と色の表現
どれだけ高級なスキャナーを用いたとしても、原本と全く同じ色味の画像を作成することは不可能と言っても過言ではありません。
後から何度も補正加えれば可能かもしれませんが、スキャンをしただけの段階では機械の特性上色味が変わってしまいます。
色によっても変化やその度合いが様々なので、それらを把握したうえで明るさやガンマの補正をすることが場合によっては必要となります。
この記事では、
①基本色とスキャン結果
②淡い色とスキャン結果
③濃い色とスキャン結果
の3つのパターンで検証を行い、それぞれ元となる画像データと、それを印刷してスキャンしたものを比較しました。
そこから見えるスキャナーの特性、色味の変化への対策について解説します。
①基本色とスキャン結果
次の画像は、赤、黄、緑、青、黒の5色を基準に、色とスキャン結果を比較したものです。
※使用スキャナー:Fujitsu fi-6800

上がIllustratorで作成した色のサンプル、下がそれを印刷した用紙をスキャンしたものです。
比較結果を見ると、「Red」「Yellow」「Green」「Blue」は本来の色よりも暗さが増して、色味が変わっています。
一方で「Black」はスキャン画像の方が薄くなっています。
抽出した色をカラーピッカーで表示すると、よりそれぞれの色味の変化が分かります。



中でも、緑が実際の色味と大きく異なることがお分かりいただけると思います。
少し青みがかり、黒に近づいたような印象です。
他のメーカーのスキャナーでも同様の結果となりました。
また、黒は他の色に比べ、スキャナーが発する光の強さに比例して色が薄くなりやすい特性があります。
つまり、明るさの補正の影響を受けやすいということです。
補正を全く加えなければ裏写りなどの問題が生じますので、黒が薄くなるのは致し方ないということになります。
緑をスキャナーの設定で補正する
先ほどのスキャン結果から分かるように、緑を基調とした画像はスキャンすると原本とは異なる色合いになりがちです。
実際に植物や細胞など濃い緑を使用した画像をスキャンすると、他の色よりも黒く潰れやすくなっています。
ペパレスでもそのような書籍のスキャンは、スキャナーのガンマ値を高めに設定するなどの対策をとっています。
ガンマ値を上げることで緑特有の暗さの補正はある程度可能です。
しかし、他の色も同じだけ薄くなったり明るくなったりするので、バランスも考えたうえで設定を行う必要があります。
下の画像ではガンマ値を上げたことで潰れていた木々の間の表現が見えるようになりましたが、空などの明るい部分は実際の色よりも淡い表現になっています。

また、緑が黒に囲まれている場合は、特にガンマ値を上げる必要があります。
普通にスキャンしただけでは画像のように周りの黒と同化して形が曖昧になったり、消えてしまったりするケースがあります。

※上が元画像。下が元画像を印刷したものをスキャンした画像。
緑をPhotoshopで補正する
スキャン後の画像であれば、Photoshopで色味を補正することができます。
植物の画像で検証した結果、ガンマ値が高く全体が薄い画像に対して自動カラー補正を行うと、本来の色味に近いハッキリした緑が表現できました。
一方で、適切なガンマ値のスキャン画像で同様の補正を行うと、全体的にとても暗くなりました。
Photoshopで加工を行う前提でスキャンする場合は、ガンマ値を高めにするなど予め加工に応じたスキャナーの設定を行った方が良いでしょう。


②淡い色とスキャン結果
次のサンプル画像は、①の基準の色に透明度85%の白を重ねて、色を薄くしたものです。

この画像を印刷し、スキャンしたものが次の画像です。

一番上の段が背景除去機能を切ったままスキャンしたもの、その下の段が背景除去機能のレベルを「低」に設定してスキャンしたもの、その下の段が背景除去機能レベル「中」、一番下の段が背景除去機能レベル「高」でのスキャン結果となっており、下へ下がるほど補正が強くなっています。
次に、淡い色のサンプル画像と背景除去機能オフのスキャン画像(一番上の段)の色をそれぞれ抽出し、カラーピッカーで比較しました。



淡い色は、①の標準的濃度の色よりも全体的に本来の色味に近い状態で画像化されました。
ただし黄色は背景除去機能の影響を受けやすく、弱い補正でも消えてしまいやすい特性があります。
テキスト中心の文庫本などをスキャンする際には都合が良いのですが、イラストや写真は黄色が消えていないか注意する必要があります。
背景除去機能や明るさを可能な限り控えめにすれば、薄い黄色であっても綺麗にスキャンされることもあります。
逆に淡い赤や青は補正の影響を受けにくく、色味もほぼ変わることなくスキャンできることが比較結果から分かります。
③濃い色とスキャン結果
次の画像は、①の基準の色を暗くしたものとスキャン画像です。
上がIllustratorで作成したサンプル、下がスキャン結果です。

こちらもカラーピッカーでそれぞれの色を抽出し、比較しました。



全体的に実際の色より暗くなっていますが、やはり緑は他の色よりも変化が大きく、色味を保つのが難しい色であることが分かります。
黒が薄くなっていることから、ガンマ値の影響で画像が暗くなっていないことがお分かりいただけるかと思います。
スキャン作業では画像の暗さに合わせてガンマ値を上げて補正しますが、暗くなるほどに値の上げ幅も大きくする必要があるということになります。
暗い色ばかりが使われた写真やイラストをスキャンする際は、大幅にガンマ値を上げることで漸く本来の色彩に近づきます。
この度の検証から
・緑は現物より暗い色で画像化され、色味の変化も大きい
・黒は画像化すると現物より薄くなる
・淡い色は現物に近い色で画像化されるが、色が濃くなるとスキャン画像の方が暗くなりやすい
というスキャナーの特性が見えました。
このように「色」という視点から見たスキャン画像には、様々な問題があります。
問題を完全に解決することはできなくとも、それぞれに前処理の工夫や修正を重ねることで、用途に適した画像へ近付けることは可能です。
本の自炊を行われる際、その他写真やイラストをスキャンされる際には参考にしてみてください。